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  • 執筆者の写真Akagi Lab

研究内容 -多能性幹細胞に関する研究-

■多能性幹細胞に関する研究


多能性幹細胞の自己複製制御機構① -Dax1, Esrrb, Oct3/4の解析-

 以前の研究から Dax1とOct3/4のタンパク質間相互作用を見出している。ここでは、Dax1と相互作用する因子として核内受容体Esrrbを同定した。すでにEsrrbはOct3/4と相互作用し転写活性化能を促進することが知られていたので、Oct3/4、Dax1、Esrrbの相関を解析した。その結果、(1) EsrrbはDax1とタンパク質間相互作用すること、(2) EsrrbはDax1 mRNAの発現を促進し、そのEsrrbの転写活性化能はDax1によって抑制されること、(3) Oct3/4、Dax1、Esrrbの三者は、同時に複合体は形成せず、Oct3/4の転写活性化能をDax1が抑制し、Esrrbが促進していること、などを見出した。以上から、3つの転写因子間でregulatory loopが形成され、ES細胞の自己複製能を制御している可能性を見出した(Uranishi et al. Mol Cell Biol. 2013)。


多能性幹細胞の自己複製制御機構② -ETV4/5の解析-

 最近の研究から、ES細胞とがん細胞の類似性が指摘されている。そのような背景のもと、がん細胞で強く発現する転写因子ETV4/5が、ES細胞でも強く発現していることを見出した。私はETV4/5両遺伝子破壊(ETV4/5 dKO)ES細胞を利用して、ES細胞におけるETV4/5の機能を解析した。その結果、ETV4/5 dKO ES細胞は、(1) 細胞の未分化状態を示す未分化マーカー陽性であること、(2) 増殖能が低下し、CDK inhibitorが過剰発現していること、(3) 分化誘導すると、外胚葉マーカーの発現が充分に誘導されないこと、などを解明した。このことから、ETV4/5はES細胞の未分化状態維持には関与していない一方で、増殖能と多分化能の制御に関与することで、幹細胞性を制御していることを解明した(Akagi et al. J Biol Chem. 2015)。


多能性幹細胞の自己複製制御機構③  -Baf53aの解析-

 BAF複合体はクロマチンリモデリング複合体の1つであり、細胞内の様ざまな生命活動に関与している。私は、その構成因子の1つであるBaf53aの機能解析を行った。その結果、(1) Baf53a遺伝子破壊により細胞死が観察されること、(2) Baf53aの発現停止に伴い、がん抑制遺伝子p53の蓄積や、アポトーシスの指標となるCaspase3の活性化が起こること、(3) これらの表現型はBaf53aやBaf53b(Baf53aのホモログ)によってレスキューされること、などを見出した。これらの結果から、Baf53aはES細胞の生存を積極的に維持していることを解明した(Zhu et al. Sci Rep. 2017)。


 以上に加え、様ざまな転写因子やエピゲノム修飾因子の機能解析を遂行した。これらの因子群がES細胞で転写因子ネットワークを構築し、ES細胞の自己複製制御機構を制御している可能性を見出した(Ueda et al. Stem Cells. 2017; Fujii et al. BBRC 2013; Ura et al. EMBO J. 2011; Ura et al. J Biol Chem. 2008ほか)。



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